韓国の貨物列車

中澤 文武

 標準ゲージと大きな積載限界、軸重にささえられた、隣国の貨物列車を紹介します。

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京釜線ソウル近郊、儀旺(ウィワン)駅の側線群。巨大貨物ターミナルが近接する。


1.概要

 韓国鉄道公社は保有する路線のほとんどで貨物輸送を行い、1日に430本の貨物列車が運行、貨物扱い駅も全国にちらばり、各駅では当たり前のように荷役も行われています。これはソウル首都圏の国電路線も例外ではありません。ヤード輸送も健在で韓国では近代化されつつも1970年代の日本の鉄道貨物の風景が残っています。
 そんな韓国も貨物輸送の主役は道路輸送で、年間輸送総量の88%のシェアを誇り、一方鉄道は年間輸送量4600万トン、3%のシェアで、トンキロでは108億トンキロで10%のシェアと、我が国の鉄道貨物と似たような現実があります。道路輸送はこのところ年10%の伸びがありますが、鉄道はほとんど伸びがありません。経営も赤字経営が続きます。
 しかしこれは国土が小さく輸送距離が短いという鉄道にとって不利な面から見ると、むしろ日本の鉄道貨物より輸送量が多く、シェアも若干多いのは立派であり健闘してると言うべきで、事実セメント輸送は圧倒的に強く、肥料輸送(鉄道で7割のシェアを持つという説あり)やコンテナ輸送なども大きい輸送シェアを持っています。路線によっては輸送力は限界に達しています。
 周知の通り韓国は釜山港という大港湾を持ち、そこと首都ソウルの間に全輸送量の60%以上が集中、鉄道もこのソウル-釜山のコンテナ輸送と、中央線など半島横断路線を軸にしたセメント輸送の2本が大きな柱です。臨港路線中心に貨物専用路線や引き込み線も豊富に存在し、さらに貨物線の建設や計画も進み、堅実な韓国物流の一翼をになっています。

2.貨車の紹介
韓国の貨車は特種用途をのぞき全てボギー貨車、荷重50t、自重70t前後、軸重18tが基本。有がい貨車、鉱石用無がい貨車、槽車(タンク車)、バルク車(セメント車)、ホッパ車、車運車、長物車(含むコンテナ車)があります。以前は荷物車、車掌車もありましたが、廃止されました。
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ウイングルーフ有蓋貨車
 我が国には見られない、欧風ウイングルーフ貨車。2003年にさっそうと登場した。容積が大きく最高速度も120km/hと高速で、急速に増えている。荷重48t。

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20000シリーズ有蓋貨車1
 我が国のかつてのワキ1やワキ1000にどことなく似た、2扉式の有蓋車。荷重51t。全国の駅にありふれた存在のその姿は昔の旧国鉄を彷佛させる。最高速度90km/h。

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20000シリーズ有蓋貨車2
 これも全国の駅で見かけるワキ5000によく似た側面総開き有蓋車。パレット荷役に適している。韓国の有蓋車は主に米や肥料を運ぶ。製紙工場引き込み線からの紙輸送にもついていると思われる。写真は塗装が緑だが、現在は青一色となり、ますますJRの貨車に似てきた。

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貨車の表記
 上から、荷重、自重、容積、概算、換算。

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70000シリーズ15mクラス長物貨車
 コンテナ貨車の主力。ISO20ftコンテナを2個積載専用。特に写真の70101型はISO40ftコンテナも1個積載できる。JRのコキ200型によく似ている上、塗装までJR貨車にそっくりである。とりわけ京釜線と全羅線でよく見られる。積載するコンテナは全て輸出入用の海上コンテナであり、緊締装置もそれ専用。レール輸送と兼用にしたタイプもある。荷重50t、最高速度は120km/hと高速。車両限界が大きいので、低床構造でなくても背高海コンを問題なく運べるのがうらやましい。

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大型長物貨車
 40ftISOコンテナ1個と20ftISOコンテナ1個、または20ftISOを3個積載する、全長20m超の大型コンテナ貨車。荷役にはトップリフターやリーチスタッカーを使用するが、ソウル南部貨物基地と釜山港のようにガントリークレーンで貨車に積みおろしする駅も存在。

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バルク車(セメント車)
 実は韓国貨物列車の主力はこのセメント輸送。まさにJR貨物の石油輸送のような存在がこのセメント貨車でる。大体JRのタキ1900と同じような圧送式粉体タンク車。形態は同じだが型式は細かく分かれている。古い貨車はスピードがおそいが、2003年以降登場の新型は最高速度120km/h。荷重52t,総重量71tとJRのタンカク車よりもずっと重い。日本と同じく私有貨車が中心。

3.貨物列車ギャラリー

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ソウル近郊、吹雪の京釜線成均館大(ソンギュンクァンデ)駅を通過するコンテナ貨物列車
DL重連、時速100km/hで複々線を疾走。コンテナ車は釜山港とソウル南部貨物基地を結ぶ京釜線がいちばん多く、しかも20両以上連結している列車ばかり。列車重量は実に1400tを超える。それでも輸送力はひっ迫してるがKTXが開通し、天安まで複々線化されたおかげで、若干線路容量にゆとりがでてきている。貨物列車は複々線外側の電車線を走行することが多い。このほか、光陽港をかかえる全羅線もコンテナ輸送が多い。

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早朝の京釜線、忠清南道永同(ヨンドン)をゆくコンテナ貨物列車
深夜早朝に貨物が集中するのは韓国も同じ。路線距離が400kmあまりでは、トラック輸送にも有利で、運賃を中心に熾烈な競争がある。京釜線は電化されたが、貨物は引き続きDLが牽引。このあたりは10パーミル勾配が続く秋風嶺という、まさに韓国の関ヶ原。

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中央線、ソウル東側近郊、陶農(トノン)駅付近をゆくセメント列車
 実に鉄道貨物全体の35%以上をしめるセメント列車。その中心がここ中央線。鉱山や工場をかかえる内陸からのセメント石炭積み出しを目的に建設されたのが、太白線など半島横断路線で、ここはまさに貨主客従。単線に1時間片道3本の貨物が走るのでもはやボトルネック。写真の列車は短いが、多くは編成25両をEL重連、さらにDLの後押し補機をつけて30パーミル勾配を登っている。セメント車そのものは全国にまで走り、多くの駅にはセメントサイロを見かける。

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京釜線、京畿道平沢(ピョンテク)市をゆくセメント長大編成列車
 セメント列車はこの大幹線にも走る。半島横断路線と忠北線をバイパスしてこちらに流れる列車もあるが、さいきんそれらにもELが牽引するようになった。列車によっては27両もつないでいるものも確認。列車重量は1700tにもなる。
 韓国も列車の大半が直行物資別専用列車となり、ヤード輸送列車はわずかです。

 --2004年から2007年まで4回にわたり取材したものをまとめました-- inserted by FC2 system